昨日ツイッターで「般若心経 新訳」がリツイートされてきました。
2010年、ニコニコ動画「初音ミクアレンジ『般若心経ロック』」へのコメントとして投稿された<現代語訳「般若心経」>が、若いネットユーザーには新しい情報として再燃しているんですね。
仏教の経典「般若心経」を、まるで日本語ラップのように新訳されたテキストは、たんに意味がわかるレベルでなく、今を生きる人の心にも刺さるメッセージとして、ぜひ保存しておきたいバージョンです。
般若心経 新訳(作者不明)
超スゲェ楽になれる方法を知りたいか?
誰でも幸せに生きる方法のヒントだ
もっと力を抜いて楽になるんだ。
苦しみも辛さも全てはいい加減な幻さ、安心しろよ。この世は空しいモンだ、
痛みも悲しみも最初から空っぽなのさ。
この世は変わり行くモンだ。
苦を楽に変える事だって出来る。
汚れることもありゃ背負い込む事だってある
だから抱え込んだモンを捨てちまう事も出来るはずだ。この世がどれだけいい加減か分ったか?
苦しみとか病とか、そんなモンにこだわるなよ。見えてるものにこだわるな。
聞こえるものにしがみつくな。味や香りなんて人それぞれだろ?
何のアテにもなりゃしない。揺らぐ心にこだわっちゃダメさ。
それが『無』ってやつさ。
生きてりゃ色々あるさ。
辛いモノを見ないようにするのは難しい。
でも、そんなもんその場に置いていけよ。先の事は誰にも見えねぇ。
無理して照らそうとしなくていいのさ。
見えない事を愉しめばいいだろ。
それが生きてる実感ってヤツなんだよ。
正しく生きるのは確かに難しいかもな。
でも、明るく生きるのは誰にだって出来るんだよ。菩薩として生きるコツがあるんだ、苦しんで生きる必要なんてねえよ。
愉しんで生きる菩薩になれよ。
全く恐れを知らなくなったらロクな事にならねえけどな
適度な恐怖だって生きていくのに役立つモンさ。勘違いするなよ。
非情になれって言ってるんじゃねえ。
夢や空想や慈悲の心を忘れるな、
それができりゃ涅槃はどこにだってある。生き方は何も変わらねえ、ただ受け止め方が変わるのさ。
心の余裕を持てば誰でもブッダになれるんだぜ。この般若を覚えとけ。短い言葉だ。
意味なんて知らなくていい、細けぇことはいいんだよ。
苦しみが小さくなったらそれで上等だろ。嘘もデタラメも全て認めちまえば苦しみは無くなる、そういうモンなのさ。
今までの前置きは全部忘れても良いぜ。
でも、これだけは覚えとけ。気が向いたら呟いてみろ。
心の中で唱えるだけでもいいんだぜ。いいか、耳かっぽじってよく聞けよ?
『唱えよ、心は消え、魂は静まり、全ては此処にあり、全てを越えたものなり。』
『悟りはその時叶うだろう。全てはこの真言に成就する。』心配すんな。大丈夫だ。
「般若心経」を簡単に紹介すると
そもそもの「般若心経」は、西遊記の三蔵法師として有名な中国の僧侶・玄奘三蔵が、インドから持ち帰った600巻近い『般若波羅蜜多心経』をサンスクリット語から漢語に翻訳したのち、大乗仏教の神髄という部分を、300字程度の漢語経文に書き下ろしたものと伝えられています。
短く簡潔にまとめられている点で、覚える、唱える、書き写すなど、時代を超えて人々の心のよりどころになってきました。
この「般若心経 新訳」は、原典の現代語直訳と比べると、ずいぶん思い切った意訳をしてるのがわかります。
今の時代を生きている人に向けて、仏教のことを知らなくても、先人はどう考えてツライ人生を乗り切ってきた?という考え方のヒントを、ここから何かをキャッチしていけるんじゃというメッセージになっていると思います。
「般若心経」の中心となっているのは、大乗仏教の「空(くう)」という思想。
オリジナルの経典では、観音菩薩がいろんな例を挙げながら、すべてのものには実体がないこと(=空)を説いています。
新訳では「揺らぐ心にこだわっちゃダメさ。それが『無』ってやつさ。」って表現されてますね。
実体がなければ、生まれることも滅びることもなく、汚れることも清らかであることもなく、増えることも減ることもないと。
なんにもないじゃん!と思っちゃうけど、形あるすべてのものに実体がないのであれば、すべてのものはあらゆる形をとることもできると言っています。有名な「色即是空 空即是色」って部分です。
老いや死というものも存在しておらず、老いや死がなくなることもない。
苦しみもないし、苦しみをなくす方法もない。
悟りを求める者は、彼岸に至る本質的な智慧によって、心には何の妨げもない。
何の妨げもないから、恐怖も存在しない。
あらゆる誤った考え方を超越し、どのようなことにも揺らぐことのない心の境地に行き着くのです。
(現代訳:日本文化研究ブログ Japan Culture Lab より引用)
形あるものや人間のあらゆる感覚がなければ、悩みや苦しみという概念もない。
このような「空」の思想を知る仏は、真理に目覚めて心安らかな存在でありつづけるというものです。
内容を知っても、パッとなにかが解決するものでもないけれど、「般若心経」の詠唱に集中することで、リラックスしたり脳が活性化する効果があるようです。
呼吸に意識を集中し、今この瞬間だけに注意を向けることで、脳をリセットするマインドフルネス効果に似ているのかな。あるいは落ち着くためのルーティーン。
思うようにだけ生きていくのは、そもそも困難。
恐れの対象を絞り込んでいくと、死、貧困、自然災害など、結局はいにしえの時代から変わらないのかもしれない。
悟りに行きつくのは難しいけれど、ストレスフルな世の中を生きていくための心のあり方として、記憶に留めておきたいと思います。