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深夜タクシーはなぜNHK「ラジオ深夜便」が流れているのか

深夜タクシーでは、なぜNHK「ラジオ深夜便」が流れているのか

深夜タクシーに乗ると、ほぼ必ずNHK「ラジオ深夜便」が静かに流れています。

だからなに?と思うかもしれませんが、いいですか、「ほぼ必ず」なんですよ?
「ほぼ」と付けたのは、ラジオをかけていないタクシーもあったからです。
不思議だと思いませんか? ラジオの深夜放送は他局でもやっているのに、なぜNHK第一放送なんだろう?
教えて!チコちゃん!(笑)

深夜タクシー帰宅ばかりしていた頃から「ラジオ深夜便」

リーマンショック以前、深夜まで仕事をして、タクシーで帰宅する日が週に2日はありました。
タクシー帰宅代は会社が払ってくれましたし、深夜まで仕事をしている自分に変な誇りを持っていたんですよね。今となってはイケイケな時代だったんだなと思います。

職場の近くには、リクルート系の会社が入ったビルがあって、そのビルの前には深夜帰宅待ちのタクシーがいつも列を作っていました。
流しのタクシーを手を挙げて捕まえなくても、その場所にに行けば、すぐにタクシーに乗ることができたのです。

タクシーに乗り込むと、運転手さんが「お疲れ様です」と声をかけてきて、「あ、このビルの裏にある会社で働いている者なんです」と答えると、「そうなんですか。遅くまで大変ですね。どちらまでですか。」という受け答えがいつものことでした。
そして気がつくと、車内には静かに流れている「ラジオ深夜便」。

NHKアナウンサーの穏やかな語り口、戦後の流行歌や映画音楽、童謡やムード音楽、電話を通したインタビュー、高齢者からのお便り紹介。ちゃらちゃらしたところが微塵もない、それはそれは静かで落ち着いた放送です。

紹介されるお便りは、高齢者からのものが多いんですよね。いくら年寄りは早起きとはいえ、深夜の2時や3時の放送を楽しみに聞いているという内容に、不思議な感じがします。はじめは、日中にやっている放送の再放送なのかも思いましたが、そうではないのです。

自分にはわからない深夜の世界がここにある。

「ラジオ深夜便」は深夜という時間を共有する人たちを優しく包む

数ヶ月前、何年かぶりで深夜まで仕事してタクシーで帰りました。
以前の職場とは違って、タクシーが列をなして並んでいる場所もないので、流しのタクシーを手を挙げて捕まえました。
乗り込んで、まず気がついたのは「ラジオ深夜便」が流れていたこと。
ああ、今でもそうなんだ。

そこにはスマホやツイッターの存在などない時代のように、季節のお便りや亡くなった伴侶との思い出話などが穏やかに紹介され、聞いたことのあるムード音楽が流れていました。

まるで、イーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア」だな。そんな風に思えてきました。

長いドライブに疲れて立ち寄ったホテル。そのホテルの滞在はとても快適だった。しかしホテルに住み込んでいるような堕落した滞在客に嫌気を感じ、立ち去ろうと思ったのに、どうしてもこのホテルを離れることができなくなっていて…という歌詞。

「ラジオ深夜便」は、時が止まっているような、深夜という時間を共有する人たちを優しく包む、この世とあの世の境目にあるような不思議な空間。

疲れていたせいか、そんな風に妄想が広がっていきました。

「ラジオ深夜便」は中立的に必要なもの

ラジオって習慣性がありますよね。聞く局が決まっていて、番組の区切りが生活のなにかをするきっかけになったり、サイクルになっている人は多いと思います。
毎日聴いているうち、その局、番組のペースが、自分の生活や仕事のペースメーカーになっているというのは想像できます。
深夜のタクシー運転業務のペース、上がりの時間までのペースが、「ラジオ深夜便」はちょうどいいのかもしれません。

とはいっても、なぜNHK「ラジオ深夜便」なんだろう。
たぶんいろんな意味で「安心」なんだろうなというのが僕の見解です。

淡々としながらも機械的でなく人間味のある内容は、笑うでもなく、突っ込むのでもなく、ただ受け入れて聴いているのにちょうどいいものなのだと。
その安定したトーンは、合間のCMでかき乱されることもなく、朝までずっと続きます。

乗車客はどんな心理状態で乗り込んでくるかはわかりません。なにが好みなのかも。
テンションが高い人にも疲れ切っている人にも、スローダウンさせる効能があり、音楽の好みを云々いう雰囲気でもありません。とてつもなくニュートラル。中立的です。

何も音がないと、運転手と乗車客の間に流れる沈黙に気が張ってしまうことがあります。
なにか音が流れていることで、喋らなくてもいい安心感が生まれます。

一方的によく喋る運転手さんもいるのですが、そういう時こそ静かにラジオを聴かせてください、とお願いしたくなります。
そのために、NHK「ラジオ深夜便」は必要なんだ。と気付かされます。
運転手にも乗車客にとっても、流れていることで安心できる番組なんです。


後日ちょっと気になって「ラジオ深夜便」のことを調べてみたら、かなりの人気番組で、民放ラジオを上回るラジオ聴取率をとっている曜日や地域があるとのこと。
ネットに流れる秒速なニュースや話題、時に騒がしいだけのテレビ番組とは違う、一般人の人生にじっくり寄り添う話は、夜の孤独を癒してくれるものがあるのですね。

ABOUT ME
二ゴ
うつ病になったのは10年前。それから復職、再発の休職を繰り返し、気づけばもう50代。元の自分に戻るのではなく、別の新しい自分にならなきゃともがいて生きてる最中ですけど、同じようにシンドイ思いをして生きてる人にむけて、少しでも励みになりたいとブログを始めました。