ボールに圧力を加えると形が歪み、圧力がかかり続けると、やがて破裂してしまいます。
これをボール=心、圧力=ストレスに置き換えてみると、心がストレスで歪み、耐えきれなくなって精神疾患になってしまうことがイメージできます。
どこまでの歪みで耐えきれなくなるかは、人それぞれ。
「ツライ」と言うと、「私に比べたらその程度ツライはずがない」とマウントをとりにかかる人がいますが、ツラさ、痛さは主観的なもので、人と比べるものではありません。ツラいと言ったら、その人にとってはツラいのです。
ストレスに対する感じ方の違いは、遺伝的気質によるんだそうです。
またうつ病は、脳内の三大神経伝達物質、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの分泌バランスが崩れて、感情や意欲のコントロールができなくなって引き起こされるとされています。
三大神経伝達物質を総称してモノアミンということから、これをモノアミン仮説と呼んでいます。仮説、なんですよね。それでも、現在処方される抗うつ剤は、モノアミン仮説の上で開発されています。
この脳内三大神経伝達物質の分泌のしかたにも、遺伝的気質が関係しているんだそうです。
この遺伝的気質には、6つのタイプがあることを、SAT法開発者である、筑波大学名誉教授 宗像恒次氏が臨床を通してまとめました。
この6つの気質にはどんな特徴があるかを紹介します。
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6つの気質
遺伝的気質には、大き分けて「人格気質」と「ストレス気質」があり、この2つの気質には、それぞれ3つのタイプがあって、計6つの気質となっています。
宗像恒次氏が開発したSAT法という心理療法は、この自分の気質を知るということをファーストステップにして、無意識のコントロール力を高めていき、ストレスを受けても自ら復元できるようアプローチするものです。
どんなストレスがあっても、自己復元力でしなやかに対処できるようにする「レジリエンス」につながっています。
自分の気質とどんな場合にストレスを受けやすいかを自覚することで、余計なストレスを抱え込まずに済むかもしれません。
また身近な人の気質を知ることで、余計な期待をしなくて済むようになることも大いに役に立ちます。
夫婦間、親子間、職場の上司・部下の間で、自分と気質が違うことを理解しれば、期待通りにならないことで、イライラすることも少なくなるかもしれませんよね。
それでは、6つの気質をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
*「向いている職業」は、イメージしやすいかと思って私が勝手に考えたものです。宗像氏の分類とはまったく関係がありません。
3つの人格気質
循環気質(モテタイ気質)
他者から認められたり、ほめられたりすることで、快感物質ドーパミンが分泌する気質です。つまり他者から報酬を得ることが行動の動機づけとなる「報酬依存の遺伝子」を持っています。
自分には確固たる自信がなく、自分の評価は他者からの評価に依存する傾向があります。
ノルアドレナリン関連の遺伝子があり、筋肉の動きが早く、早口で喋ることもできます。
社交的で、多くの人に囲まれ、好かれたいと思っていますが、本来は寂しがり屋さん。
ただし責任がともなう重い人間関係は苦手で、自分にとって都合の悪いことがあると、無自覚に情報操作をしたり、人間関係を切ったりすることがあります。
好意的な評価を得ることで物事に意欲的な取り組みができる反面、ネガティブな評価は受け止められず、一気に活力を失ってしまうことがあります。
■ 循環気質が心がけること
自分の考えや価値観を認めてくれる、理解者を得るのがなによりの力になります。
しかし、他者の評価を得られなかったり、自分の行動が世間体から外れてしまうと、罪悪感を抱いてしまいます。それが大きなストレスとなって、さらに自分を苦しめてしまうのです。
他者と比較することをやめて、自分を責めてしまう気持ちを抑えましょう。楽観的に考えるようにして、時に周囲に責任転嫁してしまうくらい不真面目でもいいじゃないですか。
■ 向いている(かもしれない)職業
・接客業 ・営業職 ・教師 ・タレント
粘着気質(セワヤキ気質)
精神安定物質セロトニンと緊張物質ノルアドレナリンの両方に関連する遺伝子を持ち、堂々としてエネルギッシュなところが特徴です。
自分が属するコミュニティを守ることで心が安定する「守護報酬の遺伝子」を持っており、愛情深く人の世話を焼くことが好き。
上下関係のある環境に身をおくことが居心地いいと感じ、コミュニティの秩序を守らない者や出来事には過敏に反応して、感情を乱してしまうことがあります。
物事を深く考え、几帳面で融通が利かず、自分の筋を通そうとします。
そして、自分ルールを人に押し付けるところもあります。
■ 粘着気質が心がけること
感情を乱す、筋が通らないことや理不尽なことは世の中にあふれています。自分が納得できないことには、反発するよりも前に、いったん距離をとるようにします。
自分の主張を押し付けることになると、周囲からの反発にあい、ますます意固地になってネガティブな感情が大きくなってしまうことに。
本来マジメで責任感の強い人なので、すでに周囲から信頼できる存在だと認められています。
自分ルールを押し付けることをせず、他者のルールや価値観も尊重することで、バランスのとれた人格者をめざしたいところです。
■ 向いている(かもしれない)職業
・警察官 ・自衛官 ・スポーツコーチ ・中小企業の社長
自閉気質(マイペース気質)
対人関係を避けて、自分だけの世界に入り込み、自己満足によって快感物質ドーパミンが分泌する「自己報酬の遺伝子」を持っています。
鎮静物質ギャバとの結合が困難な遺伝子を持ってるため、興奮状態になってしまうと鎮静しにくい傾向があります。
マイペースに一人で行動することを好み、一人の時間を大切にする趣味人間。セルフスペースに他人がズカズカ入ってくることには、強い嫌悪感を抱きます。
利害にとらわれず正直で、お世辞などはいえず、表情が乏しいところがあります。
だからといって周囲に無関心であるわけはなく、他者の気持ちを汲み取り、影響を受けやすい敏感さも持ち合わせています。
■ 自閉気質が心がけること
周囲に遠慮してしまい、はっきりと意思表示をしないことから、自分を苦しめる状況に陥ってしまうことがあります。
職人的で、自分一人でなんでも片付けようとする傾向があり、それがプレッシャーになっています。
周囲に協力を依頼することで、心の安定と充実した成果を達成できるようになってくるはずです。
■ 向いている(かもしれない)職業
・小説家 ・トレーダー ・伝統工芸職人 ・修理/修復業
3つのストレス気質
執着気質(キッチリ気質)
快感物質ドーパミンの受容体と結びつきしにくい遺伝子を持っているため、物事のハードルを高く設定して頑張ることで、ドーパミンを多く出そうとする傾向があります。
完璧主義者で、成果を手にしても心のやすらぎがなかなか得られない「報酬不全の遺伝子」を持っています。
結果を出すことに強い執着心があるために、集中力・徹底性・責任感・義務感・誠実感があります。
そのことから社会的信用や評価も得られます。
生真面目で自分にも人にも厳しい限度を超えた良心さと、欲求のハードルが高いことから、孤独感や無力感を持ちやすく、ストレスを溜めやすい気質です。
■ 執着気質が心がけること
よい結果を出したとしても満足できず、理想と現実とのギャップにストレスを感じてしまいます。
完全無欠な人でありたいと思い、人からの頼まれごとを断れず、一人でなにもかも背負いこんでしまう傾向もあります。
自分にも他人にも100%を求めてしまうと、自分ばかりでなく他人への過剰な期待から、つねにストレスを感じ続ける結果となります。「ま、いいか」というほどほど感を身につけることが必要です。
■ 向いている(かもしれない)職業
・スポーツ選手 ・政治家 ・投資家 ・演出家 ・弁護士
不安気質(ピリピリ気質)
精神安定物質セロトニンが慢性的に不足しているため、悲観的で常に不安を抱いています。
最悪の事態を想定することができて、それを回避することの欲求が強い「損害回避の遺伝子」を持っています。
過度な心配から、起こりもいない不安を勝手に膨らませ、思い込みによる妄想を持ちやすい傾向があります。
突発的なトラブルには異常に弱く、パニックになりやすい反面、慎重には慎重を重ねることから、長期のストレスマネジメントには強いところがあります。
引っ込み思案で、表情が乏しかったり、目つきがきつくなったり、チック症状といった見た目の特徴が現れやすいです。
■ 不安気質が心がけること
たとえ小さなトラブルでも、脳内で誇張してしまうので、必要以上なストレスを自ら作り出してしまう傾向があります。
ネガティブな感情が沸き起こったら、すぐに確信せずに深呼吸をして冷静になり、主観にとらわれず客観的に物事を見つめるようにしましょう。
客観的な視野を取り入れると、不安や心配のほとんどは、取り越し苦労であることが気づけるようになります。
■ 向いている(かもしれない)職業
・リスクマネージャー ・プログラマー ・品質管理 ・気象予報士
新奇気質(イキナリ気質)
快感物質ドーパミン受容体と結びつきにくい遺伝子関与があるため、ドーパミンを得るために新しいことや変わったものを追い求める遺伝子を持っています。好奇心旺盛で情熱的な探求心が大きなエネルギーを生み出します。
精神安定物質セロトニンが不足していることから、衝動的、逸脱的な行動の軽さが見られ、短気で攻撃的なマイナス面が表れることもあります。
■ 新奇気質が心がけること
衝動的に何も考えず行動してしまい、後悔する傾向にあります。くりかえす失敗と後悔から、ストレスを溜め込んでいってしまうのです。
衝動にかられて行動したくなっても、落ち着く時間を設けましょう。物事を判断するには、時間を空けてテンションが落ち着いてからにするよう心がけるようにします。
■ 向いている(かもしれない)職業
・冒険家 ・芸術家 ・トレンドウォッチャー ・芸能記者
ほとんどの人は6つのうちのどれか1つだけでなく、複数の気質を併せ持っているものらしいです。
持って生まれた気質から、ストレスを自ら作り出してしまうこともあるんですね。
ストレスを軽減する方法は世の中にいろいろあります。自然と触れ合うとか、ヨガとか、おいしいものを食べるとか。
それに、自分の気質によってそれぞれ違うアプローチをプラスして、ストレスで心が歪んだままにならないようにしたいものです。