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ユング心理学を知るきっかけに『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』

『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』で思い出した、ユング心理学との出会い

アドラー心理学に注目が集まるまで、僕の中にある心理学といえばおもにユング心理学の知識でした。

ユング心理学を知るきっかけとなったのは、芸術系大学に通っていた頃。
8ミリフィルムでホラー系自主映画を作ってた仲間から、次の作品はどういうものにしようか?という話をしていた時のこと。
ユングって知ってる?と、まるでお気に入りの映画監督を語るかのように、その名が出てきました。
人それぞれある無意識の深層部には、全人類共通の「シンボル」と呼ばれる存在がある。
母親に対するイメージのシンボルである「グレートマザー」、父親に対するシンボルである「オールド・ワイズマン」、もう一人の自分である「シャドー」、自分の中にある異性的存在の「アニマ、アニムス」。
心の奥底にいるこれらシンボルが表に出てきて、人格崩壊するって話はどう? という提案。

ユング心理学に興味を抱く入り方として、邪道かもしれませんが、そこはかとなく感じる「人の心の謎」と「オカルトちっく」な気配に、さっそく入門的な本を買って読み始めたのを覚えています。

最近『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』という本を読みました。
タイトル通り、ユングのことや心理学のことを知らない人を対象にした「入門書」なのですが、著者が心理学者ではなく、夏目漱石に関する読み物を多く出している作家さんであることから、すごく読みやすくわかりやすい本でした。
ちゃんと知るなら、きちんとした専門書を読め!と言われてしまいそうですが、わかりやすいエッセンスに触れることで、より深く知りたいと思えることは、「きっかけづくり」には大切なことだと思います。

読んでいくうち、ユングのことを知りたい!とテンションあげて入門書を読んだ、大学時代の気持ちがフラッシュバックしてきました。
今回はこの本をツマミにして、ユング心理学に惹かれたきっかけを書いていきます。

▶︎ 『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』 長尾 剛 著[Amazon]

ユング心理学は日本人にあっている?

『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』で思い出した、ユング心理学との出会い

文庫版の前書きに、次のような文章があります。

つまり「自分を知れば、他人も知ることができて、人間関係・社会は、すばらしい共同体になれる」というのが、ユング心理学の教えです。
筆者は、私たち日本人の心は、ユング心理学によって、より理解されやすい。
ーーと、考えます。

著者の長尾 剛氏は、フロイト、ユング、アドラーの三大心理学の中で、ユング心理学は古くから日本人に親しまれ、一番シックリくると書いています。

大学時代、フロイトとユングを入門書から読みました。
心理描写が繊細なヨーロッパ系アート映画を観るようになった時期でもありました。人物設定や表現の面で、入門書からではありますが、基礎知識を得るのとそうでないとでは、理解度が違うなと思ったものです。
そしてユングの考え方がより自分に合っていると感じたのを覚えています。
先に書いたような、人の心の謎めいた部分へのアプローチが、ちょっとオカルトちっくであったのと、アートの世界にある比喩性に近いものを感じてシックリきたのです。

ユング心理学のシックリに対して、アドラー心理学は驚きでした。
私がアドラー心理学を知ることになったのは、ベストセラーになった「嫌われる勇気」を読んでから。
アドラーは、決して最近の人ではなく、時代的にはフロイト、ユングと同時代に生きた人。
「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」として、個人の幸福を第一とした個人心理学の生みの親です。

対人関係について、こんなシンプルで、ドライな考え方してもいいんだ!という新鮮な驚きがありました。

どちらがいいとか、正しいと思うとかではなく、多感な大学時代にユングに触れたことはある意味必然でした。そして社会生活に疲れてうつになってしまった大人の自分に、アドラーは救いの手を差し伸べてくれました。

ユング心理学は、過去を振り返って今の自分を知り、望ましくない部分を正しすために乗り越えていこうというものでした。対してアドラー心理学は、過去は過去として、これからの生き方を自分で決めていくという前向きさを感じます。
今の自分を起点とすれば、過去からの自分と未来の自分へ、ユングからアドラーへとシフトチェンジするタイミングに、アドラーと出会えた気がします。そして、ユングを知っていてよかったと改めて思うのです。

ユングに惹かれた3つのポイント

『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』で思い出した、ユング心理学との出会い

ユング心理学に出会った大学時代、ピンときたのはどんなところか。
『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』を読みながら振り返ってみると、次の3つだったなと思います。

シンボル

永井豪「デビルマン」の中で、「人はなぜ暗闇を恐れるのだろう」という疑問が投げかけられ、原始的な恐怖の記憶が脈々と受け継がれているという一節を、子供ながらに頭に入れていました。
だからユングのいう、無意識の深層部には人類誕生とともに受け継がれている人類共通のシンボルという考え方も、すんなり受け入れてしまいました。

イントロに書いた、自主制作映画仲間から出たシンボルをモチーフにした次回作のアイデア、というのがユング心理学に触れたきっかけだったので、やはりシンボルの存在が一番に惹かれるポイントだったと思います。

8つの個性タイプ

世の中にはいろんな人がいる。
自分に合う人もいれば、仲良くなれない人、嫌いな人もいる。
自分が好きになった映画や音楽に共感してもらえない人とは、基本仲良くなれないことから、人のつながりは趣味で決まる、と考えていました。
でも、同じ映画が好きなのに、自分とは違うタイプの人もいます。

ユングの心理学に出てくる8つの個性タイプという考え方を知って、趣味による区別よりも、説得力のある根源的な人の分類だと感じました。
8つの個性タイプというのは、外向的態度と内向的態度という2つの区別に、思考、感情、感覚、直感の4つある心理機能の区別を掛け合わせて8つに分類する方法です。
人の心は人それぞれに複雑さがあるのは大前提。
それでも複雑さを前にして解きほぐす術を持てないよりも、ここに示された指標でざっくり分類したうえで、より深掘りしていくという手段は、効率的ですよね。

シンクロニシティ

情報を受け入れる時の信頼度は、親しい友人や好きなアーティストからのレコメンドがもっとも高くなる傾向があります。
今も活躍する大御所アーティスト、スティングがいた「ザ・ポリス」に、「シンクロニシティ I & II」という曲があります。今ではよく見かける「シンクロ」という言葉も、私が大学生だった頃には新鮮で、なんのこと?と調べた記憶があります。
共時性、同時性、同時発生という意味があり、ユングが提唱した言葉であることがわかりました。
ユング!ここで、好きだったザ・ポリスが曲にした考え方の提唱者という、確固たる信頼性が生まれました。

シンクロニシティ:因果関係がない2つの事象が、類似性や近接性を持つこと。意味ある偶然の一致が起きること。

東京に住む私がブログの記事を書くためドトールにMacBook Proを持ち込み、テキストエディタを開いて「ユング心理学について」というタイトルを打ちこんだ時、遠く離れた地方に住む見知らぬ学生が、地元のカフェでノートPCに向かい「ユング心理学について」と打ち込んで、課題のレポートを書き始めた。
そんな一見まったく関係のない偶然性も、人間同士、無意識の奥深いところでつながっているという「集合的無意識」によって起こる出来事なのだと。

シンクロニシティという現象には、心の中で思ったことが現実に反映されるという偶然性もあります。このことから引き寄せの法則など、さまざまな解釈が生まれています。

私にとっては、あくまでザ・ポリスが歌にした、科学も相容れぬすべてが繋がっている原理のことなんですけどね。

基礎知識としてのユング心理学

『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』で思い出した、ユング心理学との出会い

『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』を読んで、一般常識的な知識でも、実はユングが提唱者というものがけっこうあることに気づかされました。

言語連想検査というものがあります。
次々と言葉を被験者に与え、連想される言葉を言ってもらい、その反応スピードに着目し、心の病を発見することに役立てました。例えば「冷たい」と出されたら「氷」のように答えます。その時、他の言葉の反応よりも時間がかかってしまう場合、無意識のパワーがその言葉の連想を妨げていると考えたのです。

この言語連想検査の確立によって、精神科の医師としてスタートしたばかりのユングは、一躍脚光を浴びました。
そしてこの手法は、犯罪捜査の「嘘発見器」開発につながっていきます。
この言語連想検査を元ネタにした、江戸川乱歩の「心理試験」という短編探偵小説があります。

人の性格を言う時に使う「内向性」「外向性」という言葉も、ユングがはじめて説いた考え方です。

「コンプレックス」という言葉も、もともとユング心理学の用語でした。
理性的・客観的に判断すれば何でもないことに、自分の心だけがどうしてもこだわってしまうことを指します。

人の心の不可思議さに気付き始めるのは、中学生の頃でしょうか。
これくらいの年齢の時に、ユング心理学の基礎的なことは、学校で教えてもいいように思いました。
自分をよく知ることで他人も、世の中のことも理解していく、という思考は、人の成長に必要な知識だとも思えるので。

ユングの研究は、膨大な臨床報告をベースにしていますが、自然科学的なアプローチではないことから、非科学的だと考えている人もいます。オカルトへの理解もそれに拍車をかけているのでしょう。
欧米では、アドラーが自己啓蒙の父として有名なのに対し、フロイト、ユングは前時代的なものと捉えられ、学問として学ぶ機会が少ないようです。
外国人からも賞賛される、思いやりと寄り添う気持ちを文化として持続させていくなら、ユング心理学のエッセンスを基礎知識として持っておきたいと思うのです。

『心のトリセツ「ユング心理学」がよくわかる本』は、ユング心理学のエッセンスを知るのにうってつけの入門書。
読みやすいですから、ぜひ手にとってみてください。


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日本で最初に著されたユング心理学の本格的入門書です。わかりやすい良書。

ABOUT ME
二ゴ
うつ病になったのは10年前。それから復職、再発の休職を繰り返し、気づけばもう50代。元の自分に戻るのではなく、別の新しい自分にならなきゃともがいて生きてる最中ですけど、同じようにシンドイ思いをして生きてる人にむけて、少しでも励みになりたいとブログを始めました。