HSP(エイチ・エス・ピー)とは「Highly Sensitive Person」の頭文字をとった略で、生まれつき周囲の刺激に対して敏感すぎる人のことをいいます。とくに人間関係の感情や気配に敏感です。
一般的な日本語訳では「とても繊細な人」、ニュアンスとして、人一倍繊細、敏感、感受性が高いという意味です。
繊細であることや感受性が高いことは、クリエイティブな人にとっては恩恵ですが、それが過ぎると、生きにくさや疲れやすさを感じてしまいます。
ツイッターのプロフィール欄でも「HSP」という3文字を目にするようになってきました。なんのことだろう?と思って検索した人も少なくないのでは?
ESP(エスパー)=超能力者の仲間でないことは、すぐにわかると思います。
米国においては5人に1人という割合で存在するといわれている、HSPという人の特性について紹介します。
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HSPとはどんな人?
「HSP」は、アメリカのユング派心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した、人の特性に対する概念です。
アーロン博士は、自分の気質や経験を深掘りしつつ、数千人を対象にした調査を行って、HSPという特性をもった人が一定数存在することを見出しました。
たとえば、内気で周囲に気を使いすぎてしまい、刺激的なものが苦手で、ささいなことでも動揺してしまう人。音や光にも敏感で、一度にたくさんのことを処理することが苦手だったりします。
育った環境やしつけなどで形成された「性格」だと一般的には認識されてますよね。
しかし生きにくさを感じるまで「過ぎてしまう」場合、それは生まれ持った特性・HSPの可能性が高いそうです。
自分はHSPかも?と思ったら、アーロン博士の公認日本語サイトにある「セルフテスト」をやってみてください。
リストで当てはまる項目があればチェックを入れ、14個以上チェックがあれば「おそらくあなたはHSPです」となります。
どうでしたか?
生まれ持ったもので、英語の頭文字をとった名称がついていると、発達障害「ASD(自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害)」「ADHD(注意欠陥多動性障害)」の仲間のように思えます。
場の空気を読めないのが発達障害のASDなら、空気を読みすぎてしまうのがHSP。
つまり症状が対極にある脳の障害なのかな、と。
しかしHSPは持って生まれた特性であるというだけで、障害や病気ではないのです。
治療の必要はなく、自分の特性をきちんと把握して、自分がつらくならないような考え方を身につけること。
世の中の「普通」という枠の中に無理して自分を溶け込ませようとすると、人間関係や周囲の気配に敏感なセンサーが働きすぎて、不安や疲れが常につきまといます。
どういう状態がしんどくて、どうなればつらさが和らぐか。それを自分で1つ1つ把握していきましょう。それが生きにくさの対処法になります。
HSPとASDの違い
発達障害は脳機能の障害ですが、HSPもそうでない人の脳とは少し異なる働きをするそうです。
物事に対する感じ方に特有の傾向があり、どちらも「過ぎる」ところが似ています。
実際、HSPはしばしば軽度のASDと診断されてしまうことがあるそうなのです。
私の身近にいたASDの人は、集中力がすごく、自分の意見をズバッといい、自分なりのルールを人にも強く求めるタイプでした。
正反対に寡黙・不注意・空気を読みすぎるタイプのASDもあるんだそうです。個人の経験だけで判断しちゃいけないってことですね。
どちらも「ちょうど良い加減」が自分でコントロールできない点が共通します。
表に現れる特徴として似ているところがあるにしても、内面にフォーカスすると、違いが明らかになってきます。
HSPの人は他者への共感性が強いのです。
自分自身と自分の周囲には目に見えない境目があって、ある種のバリアーが存在します(エヴァでいえばATフィールド)。
HSPの人はそのバリアーが希薄であるために、周囲の気配が自分に流れ込んでしまうのです。
感情や気配という目に見えないものを感じとってしまうために、周囲との関係に摩擦は起きにくいかもしれません。
ただ他人の気持ちや期待を汲んでしまうばかりに、自分の本意でない方向に流されてしまうことがあります。結果、落ち込んでしまうことにも。
人からの頼まれごとは断れないため、いつの間にか仕事が山積みになってしまい、人にヘルプも頼めず、自己嫌悪に陥ってしまうことも度々。
そうやって自分を忙しくしてしまい、そんな日が続いてしまうと、1人で静かなところに籠りたくなります。
察知してしまうことが多すぎて、疲れ切ってしまうのです。
HSPの生きづらさ
「ふつう」からこぼれて、生きづらさを感じる人はたくさんいます。
外見からは分からず、人からは「いい人」と思われがちなHSPの人も、生きづらさを抱えています。
ささいなことでも動揺してしまう。
身体面と内面の両方で、敏感さゆえ、気になって仕方ない状態になってしまいます(程度には差があります)。
身体面の具体例として、Tシャツや下着のタグが肌にあたる感触が気になって仕方ないとか、痛みや匂いや味の変化に過敏だったり、電化製品の通電音が気になるなどの五感の過敏さがあります。救急車のサイレン音、近所の工事音などにも圧倒されて平静でいられなくなります。
内面では、他人の言葉に影響を受けやすいです。その言葉が発せられた裏側の感情をも敏感に感じ取ってしまい、いつまでも引きずってしまいます。
同僚が上司から怒られている場合でも、自分が怒られているわけではないのに、その感情の波動に圧倒されてしまうのです。
また聞き役として重宝されすぎて、ドロドロとした人間関係のはけ口とされてしまうこともあって、他人事ながら疲労感でヘトヘトになってしまいます。
こんな性格は嫌だ、もっと図太く生きていきたい。
性格であれば、軌道修正が可能かもしれません。
でも持って生まれた特性となると、スルーしようにもセンサーが察知してしまうのです。
他人の言葉や感情を汲みすぎて、自分軸で生きていけない。
自分の意思や理想とする姿と、現実の自分にギャップが大きい場合、自己肯定感が低くなってしまいます。
そのような土壌があったうえで、ストレスを抱え、自分を責めやすい傾向から、HSPの人はうつになりやすいとも言われています。
どうしたらこの負のループから抜け出せるのでしょうか。
HSPでもふつうに生きていきたい
私自身、HSPの3文字を目にして、なんだろう?と検索したのが昨年のこと。
セルフテストをしてみて、調べていくうち、自分にはHSPの傾向があることがわかりました。「腑に落ちる」思いでした。
精神面・性格の弱さだと思い込んでいたことが、生まれ持っての特性でした。なら、開き直りというか、肯定するしかないですよね。
過敏さと自分の反応をどうやって折り合いをつけていくか。
他人軸ではなく自分軸で生きるようにする
アドバイスとしてよく目にするのは、このフレーズです。
それができれば苦労しません。しかし、まったくそれを意識しないよりは、意識したほうがいいってことはたしかだなとは感じています。
テレビのニュース番組をあまり観ないようにする
ニュース番組では、喜べる話題よりも、深刻で悲惨な話題がどうしても中心になりがち。自分とは関係のないことではあっても、知ってしまうと気持ちが引っ張られてしまうんですよね。
社会のことに疎くなりたくない気持ちはあるけど、少なくとも寝る前のニュースは、悲惨な事件が会った時は距離をとるべきだと思いました。
嫌われる勇気をもつ
数年前ベストセラーになった心理学者アドラーの「嫌われる勇気」。
すべての人から好かれることはあり得ないとは分かっていても、嫌われないように振舞っている自分に気がつくことがあります。
アドラー心理学で目からウロコだったのは「課題の分離」という言葉です。
他人の課題と自分の課題を分離し、相互に介入しないという考え方は、周囲の気配から自分を切り離すのに「まさに、それ」というものでした。
「それはあなたの課題であって、私の課題ではない」
という割り切りは、HSPにとって重要なフレーズだと思います。
自分の疲れ具合を指標にする
HSP対処法の多くが、うつ病の人に対するアドバイスと被っているのに気がつきました。
とくに自分を責めてしまう認知の歪みに対する、考え方を変えてみることで、歪みを整えていこうというアドバイスが。
そこで、うつ経験者が日常気をつけている「疲れ過ぎない」を、HSPとしてハマりやすい、やり過ぎ、抱え込み過ぎをセーブする指標にもできるなと思いました。
他人の期待は承知しつつ、今これ以上やったら疲れすぎると感じたら、ストップをかける。
自分軸の何を根拠にするかが明確なら、実行しやすいです。
● 以上が自分にとって実行できそうだなと思っている「考え方」です。
HSPを1つの才能として捉えると、デザインやアート系の仕事が合っていると言われています。はい、私、デザイナーやっています。うつにもなりましたけど(笑)
才能という言い方をすると、一部から「選民意識」ととられてしまいそうですが、困った特性に対する1つのアンサーという気がします。
HSPに役立つ情報
HSPを肯定的に捉え、情報発信されている方がいます。
役に立つ情報がきっとあるはず。参考にしてください。
4つだけですが、ここに紹介させていただきます。
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ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 (SB文庫)
HSPという概念を提唱したエレイン・N・アーロン博士による、HSPの教科書的な存在です。まずはこの1冊から。 -
繊細の森
HSP専門のカウンセラー武田友紀さん。
HSPを繊細すぎる人でなく「繊細さん」という親しみを込めた呼び名で、HSPについての情報や抱えがちの悩み、仕事や生き方のアドバイスを提供されています。
『「繊細さん」の本』という著書も出しています。 -
The Highly Sensitive
HSPという概念を提唱したエレイン・N・アーロン博士のサイトの公認日本語版サイト。
久保言史さんが作成・運営されています。HSPについての正しい情報、最新のHSP関連情報を読むことができます。HSPセルフテストもできます。 -
だって、HSPは才能だから
HSP/HSC才能発掘プロデューサー:皆川公美子さん。
グループセッションで、HSPの強みを見出し、社会の中で生きていく可能性を明らかにする活動をされています。
今回はHSPについて書いてきました。
世の中にはHSP、とても敏感で繊細な人がいるというのを、1人でも多くの人に知ってもらえたらと思います。いろいろな人がいる中で、ある特徴をもった人たちがいるんだということを。