物事を極端にネガティブな方向へ解釈してしまう思考のクセを「認知の歪み」と呼びます。
日々の中で感じるちょっとしたストレス。
それをいちいち極端にネガティブな考えで解釈してしまい、10倍、100倍にストレスを濃縮させ、落ち込んだり、自分を責めたりして、さらにネガティブな結果を招いてしまう人がいます。
性格的にポジティブでないというのは関係ありません。これまで生きてきた中で培われた経験や環境によって、物事をどう捉えるかのクセが身についてしまっているのです。
そういう思考のクセがある人は、うつになりやすい傾向があると言われています。
また、うつになると「認知の歪み」が強まって、症状の回復を妨げる原因となります。
いま認識していることは、バランスを失った歪んだ思考になっていないか?
そう気づくためにも、どういうことが「認知の歪み」なのかってことを、知っておいたほうがいいです。
でないと、ネガティブな考えがどんどん肥大化して、「認知の歪み」がどこまでも強化されてしまいます。暴走を止めないと。
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認知療法をざっくり紹介
「認知療法」は、精神科医アーロン・ベックが基礎を作り、弟子のデビッド・バーンズが著書「いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法」で確立に貢献したうつ病の治療法。
うつ状態でツライ状態というのは、極端にネガティブな思考から生まれると考えられます。ならば考え方を正していくと、回復が見込めるのでは?という治療法です。
感情は思考によってもたらされます。同じ出来事であっても、物事をどう解釈したかによって、感情は異なるものです。
よく持ち出される例を紹介しましょう。水が半分入ったコップを見て、「もう半分しか水が残ってない」と思うか、「まだ半分も水が残っている」と思うかで、正負どちらの感情にも転びます。
物事、考え方次第。ならば、わざわざネガティブに考えて落ち込む必要はないってことです。
適切でない考えによって生み出された感情は、そもそも信頼する必要がありませんヨ。
とはいっても、身についてしまった考え方のクセを修正するのは、簡単ではありません。
こういう考え方は歪んでいるから、こっちの正しい考え方にチェンジしましょう、と言われたって、無理なく受け入れられる着地点は人によってさまざま。
説得されて頭に叩き込んだとしても、自分で納得できていなければ、とっさに適切な認知なんてできないですよね。
考え方をまるっと入れ替えるのではなく、自分にとって受け止めやすい形にブレンドして、硬直化思考を解きほぐしにかかりましょう。
自分の考え方が歪んでいるかどうかって、実は認識しにくいんです。
このあと紹介する項目リストで、自分にはそういう面があるな、と気づけるとは思います。しかし、どの程度そこにハマっているかについては、自分を客観視できる状況でないと把握できません。
だから自分の客観視ができなくなるうつがひどい状態では、認知の歪みが強くなってしまうのです。
治療するとなったら、自力ではなく、心の専門家である医師やカウンセラーとともに、焦らずスモールステップで進めるのがいいと思います。
お金もかかりますけど…。
オンラインには、認知行動療法をベースにしたコミュニティ「U2plus」というものもあります。こちらの利用は無料なので、試しに登録をして、中をのぞいてみてはいかがでしょう。
認知の歪み 10のパターン
それでは、身についてしまった極端にネガティブな思考のクセ=認知の歪みには、どういうものがあるかみていきましょう。
1. 全か無かの思考
何事も白黒はっきりつけたがって、途中にあるグレーのグラデーション状態を認めない二極思考のこと。「白黒思考」とも呼ばれています。
英語だと「all-or-nothing」。完璧主義者にありがちな思考です。
2. 一般化のしすぎ
個人の少ない経験や、わずかな事例をサンプルにして、それが一般的なものだと決めつけてしまう思考パターン。
「いつも」「みんな」「絶対」という言葉を用いがち。
3. 心のフィルター
物事の悪いほうにだけ意識が行ってしまい、良い部分が意識されなくなってしまうこと。
ちょうど1滴のインクがコップ全体の水を黒くしてしまうように、気持ちを暗くさせてしまいます。「心のサングラス」とも呼ばれる。
4. マイナス思考
良いことを良いと考えられなくして、良いことまでも悪いことに置き換えてしまう思考パターン。
「心のフィルター」は良いことをなかったことにしちゃいますが、「マイナス思考」は良いことまで悪いことに置き換えてしまいます。
バーンズによると、認知障害の中でも最もタチが悪いらしいです。
5. 論理の飛躍
根拠もないのに、ネガティブな結論にいきなりショートカットしてしまうこと。
「心の読みすぎ」と「先読みの誤り」の2種類があります。
- 心の読みすぎ
断片的な行動や発言から、確かめもせず、その人の本意を決めつけてしまうこと。読心術とも呼ばれる、 - 先読みの誤り
未来のことは誰にもわからないのに、将来を決めつけてしまうこと。
6. 拡大解釈、過小解釈
自分の失敗や悪いところは必要以上に大きく、自分の成功や良いところを極端に小さく考えてしまう思考パターン。
自分には厳しく他人には寛容という場合もあります。
7. 感情の理由づけ
人は出来事に対して思考が先に反応し、それから感情が決まります。
しかし感情が先走ってしまい、その感情を根拠にして、物事を決め付けてしまう思考パターン。
8. ~すべき思考
「~すべき」「~でなくてはならない」という自分基準のルールを作り、ルールから反れることを許せない思考パターン。
これが自分に向けられると、自己嫌悪や恥や罪の意識を感じてしまいます、。
9. レッテル貼り
自分や他人に固定化したイメージをつけてしまう思考。一度貼ったレッテルはなかなか剥がせない。
「一般化のしすぎ」を強化したものといえます。
10. 個人化(誤った自己責任化)
よくないことが起こると、自分には全く関係ない出来事でも、自分の言動と関連づけて、責任や原因が自分にあると考える思考パターン。
うつがひどい時、「こんな簡単な仕事もできない自分なんて、もうなにもできないんじゃ? みんなのお荷物になりたくないし、自分はこの会社にいらない存在なんじゃないか。」なんて思ってしまうことは、まさに「認知の歪み」オンパレードな考え方ですよ!
誰にとっても、多少は「あるある」って感じるものかと思います。
程度の問題です。それぞれの傾向が極端で、いつだって感じてしまうとなれば、それだけ自分も苦しめられているのではないでしょうか。
無理に「正しい」考え方を取り入れようとしても、かえって自分にプレッシャーをかけてしまいます。
自分にあった違う考え方を見つけていくことで、自分の気分をラクに変えていけるんだ、という心意気でいきましょう。
まずは自分が「正しい」という考えに固執してしまう時ほど、立ち止まって「今、自分は認知の歪みにハマってないかな?」と疑ってみるところからやってみましょうか。